高齢化社会に伴い、その将来を担う看護や介護の業界のニーズはとても高まっています。その中でも、残り少ない余生をよりその人らしく過ごして欲しいという事から注目されているのが老年看護です。
老年看護は、医療的なケアではなく、包括的な役割が主になり、医療、保健、福祉、その他様々な業種やサービスが協力をする事が求められます。
そこで最も注目されるのが、老人看護専門看護師。この資格は、老年期に対するケアのスペシャリストとして場所を限定する事なく活躍する事が出来るので、今後最も必要とされる専門看護師の資格なのではないといわれています。
老年看護は、対象となる老年者…つまり高齢者の意思する事が最も大きなテーマとして挙げられます。
老年期の看護や介護にあたっていると、時折こんな卑下的な言葉が聞かれます。
「どうせ認知症で自分の事も分かってないから。」
「どうせ意識がないから。」
果たして、本当にそうなのでしょうか?
認知症であっても、食べ物や色、音楽といった様々なキーワードで頭の中の回線が“ピピッ”と繋がる事があります。また、意識がなくとも何度も名前を呼ぶ事で少しずつ脳が刺激され、ある日突然、表情や四肢に反応を示す事があります。
そう、例え認知症で自分さえ忘れていても意識を無くしていても、心は決してなくなっていないのです。そこで老年期を見守る看護師は、その老年者が個々を失う事なく健やかに老いる事が出来るよう援助する事が求められるといえるでしょう。
また、老年者にとっては“家族”の存在がとても重要です。そこで家族を含めたオールマイティーな看護が求められます。
患者と家族の仲がそぐわない場合も少なくありません。そんな時は、家族が看護や介護疲れに陥っているかもしれませんから、患者に問題がなければ施設などに預けるといった提案をするのも1つの手。もちろん、この際患者が嫌がるのであればきちんと話し合い、双方にとって最良の策を導く。これも老年看護師の腕の見せどころだといえます。
その中でも特に終末期(ターミナル)は、患者の声はほぼ聴く事が出来ません。そこで大事なのが、それまで関わってきた家族への配慮となるのです。
人の死というのは、どんな最期であれとても辛く悲しい事。もし家族であれば、その悲しみは特に計り知れないものとなります。その時、いかに家族への声掛けや気遣いを出来るのか、それは老年看護に携わる看護師にとってとても大きな課題になるといえるでしょう。